伊藤 誠(いとう まこと)が“桂 言葉(かつら ことのは)”と出合ったのは榊野学園の入学式のとき。言葉は誠の隣のクラスで、同じ沿線から通っていて、毎日同じ時刻の電車に乗り本を読んでいる。気にはなるけど、遠くから眺めているだけ…。ただ、それだけの存在だった。携帯電話のおまじない…「好きな人の写真を待ち受けにして3週間、誰にもバレなかったら恋が成就する」誠はばかばかしいと思いながらも、電車で出会う言葉の姿を携帯電話の待ち受けにする。だが、そんな誠の待ち受け画面に映った言葉の写真を同じクラスで隣の席の“西園寺世界(さいおんじ せかい)”に見られてしまう。おまじないを始めて1日目ではかなく散ってしまった淡い期待だったが、世界が勝手に誠の待ち受けを見てしまったお詫びにと、誠と言葉の仲を応援したいと二人の間を取り持つ事に…。その日から誠の退屈だった日常が大きく動き始める。
都市部から遠く離れた片田舎、奥木染(おくこぞめ)。春日野悠は、妹の穹を連れてその町に向かっていた。そこは幼少の頃夏休みに何度も訪れ、過ごした祖父の家があり、懐かしい場所であった。不慮の事故により両親を亡くし、拠り所を失った2人は、今は誰も住んでいない祖父の家に引っ越し、そこで暮らす事を決める。小さい頃から、あまり変わっていないように感じた町並みや人。懐かしい想い出や、静かな環境が、悠を癒していったが、徐々に変化が訪れる。想い出として心に刻まれたときからもう始まっていた未来。今まで傷つき、不器用な生き方しかできなかった相手と、悠はどう向き合うのか・・・・・・日差しが強まる初夏の空の下、物語が動き始めるのたっだ。